北の国から20××~約束~原作/スパイラル智哉

第3話





彼女は居なかった。
僕はひとりビルの前にじっと座り彼女が来るのを待った。
行き交う自動車たちをボーッと見つめていた。
そのうちビルの影の角度が変わっていくのを感じた。
去年とは違って風がとても冷たい。
秋だった。


彼女は来なかった。


「ま、こんなもんでしょ」
僕は無性にドラムを叩きたくなった。
重い腰を上げて歩き出す。
近くのコンビニの店員さんに
「この辺にスタジオってあります?」と聞いたが分からないらしい。
~三沢エルボーをお見舞いしてやった。~
仕方なく諦め今晩の宿にチェックインした。
なんだか疲れがどっと出ちゃった。
テレビをつけると、いかにもローカルって感じの番組がやっている。
缶ビールをプシュっと開ける。
そして僕は持参したスティックを取り出し、枕を叩き出した。


涙のルーディメンツ。



切なかったなぁ。
ま、こうなることは分かってたんだけど、それを覚悟でここに来たんだけど。
でも切なかった。
切なかった。
今この時点で世の中で一番僕がバカな奴だと確信をしていた。


~そのうち腹が減ったので、ラーメン屋に行った。
店が薄暗い。
奥から意地悪そうなおばさん従業員が出てきた。
「あ、まだ大丈夫ですか?」
「はぁ...どーぞ...」
ズルズル、ズルズル
「お客さん、もう閉店なんですが」
「す、すいません。すぐ終わりますから。」
ガチャガチャ!従業員は僕のどんぶりを片付けようとした。
「子供がまだ食べてるでしょうが!」
バリーン!
切なかった。~



第3話終わり